目を合わせるということ
著者:モモコグミカンパニー
社販発行:2018年3月7日
みなさん、BiSHを知っていますか?
2015年に結成されたアイドルグループです。
BiSHは[Brand-new idol SHiT]の略で、新生クソアイドルとしてデビュー。
BiSというアイドルの固定観念をぶっ壊し続けて華々しく散ったグループの後継として、大きな期待と反発の視線を受けながらスタートしました。
のちに、メジャーデビューに合わせて[新生クソアイドル]という肩書きは外れ、現在は[楽器を持たないパンクバンド]という肩書きで活動しています。
BiSH / DEADMAN[OFFICIAL VIDEO]
ちなみに、BiSはバックグラウンドを露悪的に見せることによって、キラキラした表面だけを見るアイドル像から、現在のテキストで追うことでより思い入れが増すプロレスの物語性を取り込むことに成功し、これまでアイドルに目を向けなかったバンドシーンにいた層などを取り込み、新たなアイドルカルチャーを開拓したモンスターグループと、個人的には位置づけしています。
気になる方はOTOTOYに足跡がたくさん残されているので、まずはそこから読んでみるといいですよ。
アイドル・グループ構成員増殖計画ーアイドル・グループの作り方ー - OTOTOY
なんだかんだで、現在はBiSも復活し、新生BiSとして快進撃をしそうで足踏みをしたり、BiSのシンボルだったリーダーのプー・ルイが卒業してしまったりと、旧BiSとは方向性が微妙に違いながらも新たなエモい 状況を作っています。
個人的には、旧BiSはときどきネットニュースで目にするも、メンバーの脱退が激しずぎるグループだったため、検索して出てきた記事の写真に写るメンバーがいつも違い、
BiSというのは何グループもあるのか?
どのメンバーが最新なのか?
など、わけが分からず混乱。
やっと分かってきてハマりだしたころには解散という感じで、寂しい思いをしながらとりあえず旧譜を聴いていたところに、BiSH結成のニュースが流れてきて大喜び。
ということで、私はBiSHのことをメンバーが決まる前から追いかけているおじさん清掃員の1人なんです。
あ、清掃員はBiSHファンの呼称です。
さて、枕が長くなりましたが、
そんなBiSHの初期メンバーの1人が著者のモモコグミカンパニー(モモカン)さんです。
会社ではありません。
BiSHのあまのじゃく担当であるモモカンは、デビュー初期はどちらかというとお笑い担当というか、トーク面での活躍を期待されていたように思います。
あと、「飽きたらいつでもやめる」みたいな、すごく刹那的な発言をする印象でした。
BiSH/ALL YOU NEED IS LOVE [OFFICIAL VIDEO]
それが、日比谷野外大音楽堂、幕張メッセでのライブを経た以降、ずいぶんキャラが変わってきたなと感じていました。
キャラが変わったといっても、作られたキャラということではなく、むしろ素が出てきたというか、これまでのゴテゴテした仮面が外れて真っ直ぐなキャラになったという感じかな。
本人はもちろん素の自分ではないと言うだろうけど、斜に構えず感情を素直に出すようになったように見える。
それが、タイトル
目を合わせるということ
で表すひとつの姿なのかな。
そんな変化は、本書を読むことで納得できました。
現在のBiSHは、個性がバラバラでイビツな凸凹が奇跡的に共振してものすごいパワーを生み出しているグループです。
ダンスや歌は、確かに初期の他のメンバーと比べればど素人で劣っていたかもしれないけど、清掃員にはそれも個性にしか見えていなかったし、モモコグミカンパニーのいないBiSHの姿なんて過去もこれからも想像できない。
でもそれは、危ういバランスをみんなで必死に努力しながら取り続けてきた結果なんですね。
さらに、モモカンはその中で引き離されないように必死に食らいついていきながら、自分の存在意義を探していくうちに、だんだん自分自身と目を合わせることができるようになっていったのかな?
なんて本書を読みながら想像していると、ますますエモい気持ちになっていきます。
そんな、モモコグミカンパニーの視点から、BiSHのデビューからMステに初出演する前日までの舞台裏を記録された本書ですが、清掃員だけが読むにはもったいない一冊です。
一人の若い女性の綴った日記のようだけど、読んでいるとドキュメンタリー小説のようにも、アイドルグループを舞台にした成長物語にも見えてくる不思議な体験ができる本です。
あ、BiSHはBiSH。
アイドルではないんでしたっけ。
ちなみに蛇足ですが、1ページ目から全体的に論文のような硬い文体と小説のような優しい文体が混ぜこぜになっているのも、初めて書いた本の初々しさを感じてほっこりします。
現在、モモカンはBiSHの多くの楽曲で作詞を採用されていますが、将来はきっと文章の世界でも活躍してくれるでしょう。
あ、もしかしたらBiSH以外の楽曲でも作詞をしていく、有名な作詞家になったりして。
大学生から社会人になる季節の間で、これからの自分像に揺れる女性の成長過程の物語として読むこともできる、高校生から20代の社会人にオススメしたい。
当然ですが、清掃員は読んでおかないとこれからのBiSHの物語に乗り遅れるのでマストです!
さらにWACKスレイブにとっては、なぜ現在BiSHが旧BiS研究員とは別のファンを増やしてWACKを引っ張る存在になれたのかを知るきっかけになるマストアイテムです!
何卒!