読み終わったら取り急ぎ温泉に入りたくなりました-遺言私が見た原子力と放射能の真実

本書を読もうと思ったきっかけは、以前に紹介した苫米地英人氏著の超小型原子炉の教室がきっかけです。
超小型原子炉の教室が、本書の著者が研究した超小型原子炉の可能性について書かれてる以上、本書に何が書かれているのかはやっぱり気になるじゃないですか?
というわけで、読んでみると内容は思ったより重くなく、原子力についても理解しやすく書かれていた、タイトルがまるで松本人志の本のような一冊を紹介します。
著者:服部禎男
発行:株式会社かざひの文庫
初版発行:2017年12月7日
本書の概要

本書は、戦後の原子力研究に長年かかわってきた著者が発見した原子力の安全な利用方法と、それを実現するためのアメリカで特許も取れている超小型原子炉の可能性についてまとめられたものです。
構成としては、これまでの日本と世界の原子力の歴史をなぞりつつ、放射線と放射能の誤解や現在までの研究から判明していること。
東日本大震災で起きた東電原発事故の真相と、あの事故の原因で本当に問題だった部分についてなども書かれています。
原子力発電の話なので、政治に関わるような話は苦手だという人も多いかと思いますが、生活に直結する電気代が高い理由を知ることができますし、なにより、本書を読むとアラフォー以上のZOOM会議で想像以上に老けていた自分の顔を見て絶望した人は、取り急ぎ近場の温泉を検索したくなるはずです。
報道されない原子力

本書を読んでいると、原子力問題については国民にとって悪いことだけでなく、安心材料になることすら報道されてないことに気づかされます。
とにかく、
「え?そうなの?」
「たしかに、科学を前提に冷静に考えれば、それは問題にならないような・・・。」
みたいなことがいっぱいあるんです。
たとえば、現在、日本が原子力の安全基準にしている数値は相当古く、現在の研究で明らかになっていることがまるで反映されていないものだということも知られていないですよね。
別に原子力を擁護したいわけではないですが、どんな分野でも研究が継続されているものに関しては、10年前の常識が現在もそのまま通用するということはちょっと考えにくいです。
ましてや、その基準値が、現在では否定されている実験結果をもとに作られている上に、ここ20年くらいの研究成果をまったく反映していないものだったとしたらどうでしょうか?
でも、そういう話って報道されないですよね。
別に、放射線の安全基準はどうなのか報道したって問題はないはずなんですけど。
なんとなく、報道番組の制作側がしっかりと情報を調べていないことが回り回って原子力の報道タブーを作ってしまっているような気がしてきます。
あと、原子力に限らず、国内には古い基準、古い常識のまま運用が続いていることってたくさんあるようですが、それを様々な理由で変えられないのが現状の日本なんですよね。
フロッピーディスクなんて企業では20年前から徐々に使わなくなっていったものなのに、今になって廃止する!って宣言して話題になっているところがあるんでしょう?
本来なら、そんなアホくさいこといつまでやってるの?ってツッコミを入れる役目を負っているはずの報道機関が放ったらかしにし続けてきたんですよ。
こんな話題にもツッコメないのだって、そりゃあ官庁への忖度もあるかもしれませんが、実際のところはフロッピーを使い続けている理由を、時間や予算の関係もあって詳細にていねいに調査できないからだと思うんですよね。
原子力問題って、実は原子炉の危険性のことだけではないはずなんです。
たとえば、現在、田舎の山に大量に設置されている太陽光パネルは、実はとんでもない時限爆弾で、現在の統一教会問題にも引けを取らないんじゃないかと思うほどなんですけど、その問題を報道せず、10年後に爆発しだした頃にやっと報道しても後の祭りなんです。
従来の火力発電についても、本書を読む限りでは地球環境の問題だけでなく健康問題についても冷静に分析した上で選択する方がいいと思うのですが、世間の混乱を恐れてか、そもそも興味がないからなのか、報道されることはないですよね。
結局、エネルギー問題は、現在の日本で扱うにはデリケートすぎるんでしょうね。
原子力に関しては、番組を放送したら99%炎上しそうだし。
放射線を知っている人は少ない

ぼく自身がちゃんと知らなかったのですが、そもそも知識として放射線を理解している人は少ないのではないかと思います。
これは、放射線に限った話ではなくて、紫外線は日焼けする、赤外線は肉が美味しく焼ける、みたいな生活情報レベルで止まっているものがほとんどだと思うんですよ。
本書に書いてありますが、バナナを1本食べると0.1マイクロシーベルト被爆することになるんだそうです。
花崗岩はお墓にも加工される石ですが、これも放射線が出ています。
日本人はラジウム温泉もラドン温泉も好んで入りますが、ラジウムやラドンは放射性物質なので、温泉に入れば放射線を浴びることになります。
タバコも、放射性物質を含む成分が入っていることがあるそうですが、1日に2箱とか吸っちゃう人もいますよね。
ようは、放射線を浴びても大丈夫な量があるということなのですが、その「大丈夫な量」というのは、先述したここ20年の研究から上限がずいぶん上がっているようなんです。
でも、そんなことを知っている人はいないですよね?
もっと掘り下げれば、本書でも多くのページが割かれているのですが、放射線を浴びる量によっては細胞が若返る、放射線ホルミシス効果というのも研究から発見されています。
しかも、放射線ホルミシス効果についての検証実験をアメリカの権威ある研究所から任されたのは著者を中心とした日本の研究機関です。
こんなこと、ほとんどの人は知っているわけないですよね。
半減期の話だって、本書はわかりやすく説明されているのですが、半減期を理解すると45億年かかるとか色々と言われるウランも物質として安定しているから崩壊するスピードがゆっくりでその時に出る放射線も少ない量が少しずつなんだということが見えてきて、じゃあ次のステップとしてバナナを1本食べるのと比較して被爆量はどうなんだろう?
みたいな疑問に変わってくると思うんです。
だからと言って、原子力は安全だし、原子力エネルギー以外の選択肢はない!
と言われると、それは違うだろうって思ってしまうんですけどね。
現在のウクライナ侵攻を見ても、やっぱり原発は狙われて一気に広範囲の地域を危険にさらすものになるのがハッキリしましたしね。
まあ、本書が書かれたのは侵攻前の2017年ですから、世界情勢は現在と大きく異なるんですけど。
あと、自然エネルギーを含めた他の選択肢もつねに求めていかないと、科学の進展はないと思うんですよね。
もんじゅ計画から見える本当の危険

これも本書を読んでほしいところなのですが、高速増殖炉もんじゅが制御が難しかった理由が本当に残念なんですよ。
これは、国内の原子炉の設計段階から関わり、アメリカでも数々の先端研究に触れていた著者だからこその視点だと思うのですが、その現実を信じるとするなら、日本が根本的に変わらない限り、原子力発電はやめた方がよさそうだと多くの人が感じるはずです。
それと、東日本大震災による東電原発事故も、被害が拡大した理由が詳細に説明されています。
それを読んでも、現状の日本ではまた同じような事故が起きる可能性は十分にあると思えてきますし、何よりも被害が拡大した理由がとことん残念なものなんです。
本書を読んでいると、原子力発電が危険だという本質的な原因が見えてきて、このままではいつまでたっても安全だという話は信じてはいけないと思ってしまいます。
まとめとして超小型か小型か

やはり、まず心に留めておかなければならないのは、本書は原子力研究に人生を捧げてきた人が書いた本だということです。
著者は日本の原子力開発に人生の多くを費やしてきた人なので、原子力の安全性については誰よりも理解されている一方で、原子力を擁護しすぎている感もあり、危険性についての言及は少し甘いように感じます。
これは、あまりいい例えではないかもしれませんが、生産工場の仕事に関わったことのある人なら誰でも理解していることですが、温湿度なども徹底管理された工場でフルオートで製品を加工・製造しても、どれだけ改善運動をしても、不良品を100%ゼロにすることはできません。また、フルオートなのにヒューマンエラーもゼロにはなりません。
そして、ほんのわずかに起きてしまう想定外の事故や不良品に限って重大な事故を起こすものです。
だから、超小型原子炉も、もし実用化され数百基という規模で運用されたときに初めてわかるトラブルもないとは言い切れないはずです。
とはいえ、超小型原子炉の仕組みを本書で知る限りでは、大型で複雑な構造の原子炉より安全で、環境にも優しい発電方法に見えます。
2022年8月24日、政府が唐突に次世代原子炉の開発を進めるという方針を打ち出しました。
ちなみに、その発表の直前の19日、日本の寄生虫博物館にある人物が訪問したと話題になりました。
その人物とは、ビル・ゲイツ氏です。
ビル・ゲイツ氏は、現在、原子炉開発に力を入れていることが知られています。
陰謀論を語っても仕方がないですが、原子炉開発に力を入れているビル・ゲイツ氏が日本の政府になんらかの営業活動をしても、それほどおかしなことでもないかもしれません。
ただ、タイミングがあまりにも・・・、という感じはしますよね。
正直、自然エネルギー発電技術がまだまだ発電効率の悪い開発途上である上、平地の少ない日本向きではないこともあって、原子炉の建設は危険を感じるから止めたいけど実際には止められないのではないかと思います。
だったら、日本人が長年研究し、アメリカでも認められ特許にもなっている、構造がシンプルな超小型原子炉技術を中心に次世代炉を開発してほしいと思うんですよね。
でも、現在、政府に売り込まれている次世代炉はどんなものなのかよくわからないですし、たぶん外資が大きな利益を得られる構造のものじゃないかなと思います。
もし、新たな原子炉の概要が一般に発表されたとき、その仕様が超小型原子炉の基準にあったものなのか?
それとも、小型と謳っているけど超小型原子炉とは全くの別物で、事故が起きたときには甚大な被害が出るようなものなのか?
そこに関しては、一般市民も知識さえあればごまかされることなく、政府にツッコミを入れられるところなんじゃないかと思います。
どちらにしても、太陽光発電の現状のヤバさを含め、電力問題はもっと真剣に扱われるべきテーマだと思うんですけど、本書のような時代背景もわかる比較的読みやすい原子力を扱う書籍でも、わざわざ読もうと思う人は稀なわけだから、政府が原子力政策について大きな決断をしたのにテレビでもほとんど扱われずに終わっちゃうんですよね。
案外、読んでみると面白いんですけどね。
とりあえず、ラジウム温泉に入りたくなるし。

