はたらかないで、たらふく食べたい「生の負債」からの解放宣言」
著者:栗原康
タバブックス
まったくもって、これこそが現代に生きる人間の最大のテーマだろうねえ。
会社員をまじめにやっていると理解できなくなるのだけれど、月給は労働力の対価では決してなくて、時間の対価なんだよねえ。
つまり、社員の命が消耗した分に、
1時間あたり大体こんなもんじゃね?
っていう値段を人間味なく機械的につけた価格。
たぶん、一昔前はそれでよかったんだと思うんですよ。
一致団結して、日本を先進国の仲間入りさるという大きな目標が国民全体で共有できたし、
しかも所得倍増計画がまんまとうまく行って、サラリーマンはみんな、現在働いている若い人には想像できないくらい、毎年毎年給料袋が分厚くなっていったんでしょ?
それで、当時の家電三種の神器?
テレビ、洗濯機、冷蔵庫、をこぞって買ったわけだ。
それまでは2世帯、3世帯同居が当たり前だったのに、みんな団地に住んで各家庭に1台ずつ3種の神器が買われていったと。
さらに、団地から子供部屋のあるマンションへ引っ越し、今度は家族一人につき1台、洗濯機が買われていったわけですよ。
もとい!
テレビが買われるようになったわけですよ。
ちなみに、2000年代は新・三種の神器として、デジカメ、薄型テレビ、DVDレコーダーを買ってください!
と家電メーカーがアピールしていたようですが、スマートフォンがあれば事足りる世の中になってしまいましたねえ。
はは!
これだけ見ても、物が売れない時代になっているのがよくわかりますね。
ということは、多くの工場は売れないものを作っているということで、
そうだよなあ・・・
なんて考えていると、
現代ってなんのために働いているの?
って悩み出してしまい、眉間のシワが名刺を5枚は余裕で挟めるくらいドンドンと深くなって行くわけですよ。
そして、その先に思い浮かぶのは本書のタイトルのような言葉なわけですよねえ。
そうそう、この本の著者の栗原康さんですが、私が最初に知ったのは
「村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝」
なのですが、この人の文体が読みやすくて好きなんですよ。
ちくしょうちくしょう
やるせない気持ちが本の中のそこら中に溢れているくせに、栗原さんの生き様のせいか、なんだか昭和の時代に空き地で半ズボンの子供が風呂敷のマントをした姿でほっぺを膨らませているような姿が浮かんでしまうんですよね。
あと、アナキズムの研究者のせいもあるでしょうけど、どうしてもアナキズムのフォーマットというか枠の中で話が進んで行く感がありまして。
で、タイトルのわりにはドブネズミとか豚とか、さっきまで人畜無害な人だと思っていたら唐突にゲバ棒を振り回しだした、みたいな振り幅のある話が要所要所にあって、次の日に胃もたれしそうな気分になりました。
せっかくの面白いタイトルだし、振り幅を効かせる場所をもうちょっと違うところに欲しかったですねえ。
まあ、そんなエラそうことを言うなら自分で書けって話ですけどね。
それと、ここが重要ですが、現在田舎暮らしとかサラリーマン以外の生き方を模索していて、何か参考になるような本はないかな?と探している人には向いていないかなあ。
いわゆる実用書ではないんですよね。
でも、3年以上のサラリーマン生活ですっかり出来上がってしまった家畜的な考え方から抜け出すヒントはいっぱい入っている良書です。
このタイトルは、
決して怠け者のクズが わがままを言っている話ではないんですよ。
あなたも当事者なんだ!