大人だけでなく、子供にも読ませたくなります。
辻まこと著
すぎゆくアダモ
辻まことが最後に書いた本です。
辻まこと、と言ってもピンとくる方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。
伊藤野枝とはウーマンリブの第一人者、と言いたいところですが、そんなことより滅茶苦茶パワフルに生き、国に虐殺された人と言ったイメージの方がワタシには強いです。
その息子である辻まことは、伊藤野枝に里親に出されたりといろいろ苦労をしたようですが、生前は目立つことを嫌いながらも、周りから大変愛された人のようです。
すぎゆくアダモは、まずイラストが素晴らしく、その絵だけでも子供に絵本として見せたくなります。
大人にとっては文章が素晴らしく、何度も読みたくなる本です。
そして、友達にプレゼントしたくなる本です。
抽象度の高い文章で書かれた物語は、読む人によって受け取るメッセージが変わると思います。
辻まことの最後を知っている人は、物語に特別な思いを感じてしまうようですが、それはこの物語の懐が深ゆえなのでしょう。
ワタシは、変に深読みせず物語を楽しんだ方がいいと思います。そして、ふと思い出したときに読むと、読むたびに気づきを得られる本だと思います。
多くの大人は、毎日の生活がルーティンの繰り返しのように感じてるものですが、ある日、ふと立ち止まった時、
「自分の人生って、どこにつながっているんだろう・・・
いや、そもそも目の前に道なんてあるんだろうか・・・?」
と途方にくれる人もいるでしょうね。
そんな気持ちになった夜に、本棚からそっと取り出したい。
そんな本です。
ちなみに解説が付いているのですが、どうも深読みしすぎたという印象で、もし読むのなら「ああ、こういうふうに捉えることもできるかもね」くらいにしておいたほうがいいです。
せっかくの懐の深い物語を先入観で小さな世界に押し込めてしまいかねないので、いっその事、解説は読まないのもアリかな、と思います。