あなたは、お店を構えて商売するなんて、
ものすごくハードルの高いことだと思っていませんでしたか?
お店をオープンするためには、改装費に数千万円、安くても1000万円に近い金額がかかって、失敗した途端、人生が終わるようなイメージがありますよね。
まさに、人生勝負に出た!
という気負いを感じるじゃないですか。
でも、一昔前は、どこの小さな町にも本屋さんがあって、クリーニングやさんがあって、出前をしてくれるうどん屋さんがあって・・・
という具合に、個人のお店はたくさんありましたよね。
今回紹介する本を読んでいると、お店を持つっていうのは本来、そんなに難しいことではなかったんじゃないかな?と思えてきました。
今回は、『しょぼい起業で生きていく』を読んで考えた、
時代によってお店の構え方に特徴があったんじゃないか?
という話と、
これからの町と終身雇用の終わった時代の働き方について考えてみました。
ぼくの考えに行く前に、言っておきます。
『しょぼい起業で生きていく』は、サラリーマンは全員、必読の1冊です。
しょぼい起業で生きていく
著者:えらいてんちょう
発行所:株式会社イースト・プレス
初版発行:2018年12月25日
時代から考えたお店の構え方
この本を読んでいたら、
お店を構えて商売すること。
それって、時代によってどんな違いがあったんだろう?
ということが気になりました。
頭に浮かんだのは3つです。
1.平成の半ば、リーマンショック前後
このころにオープンしたお店のイメージは、バーやラウンジです。
お店を専業にするのではなく、別に本業を持っていて、その本業の税金対策で店を持つイメージがあります。
すごく偏った知識ですが、当時聞いたのは、外資系の証券会社で働いている若手ビジネスマンが、税金対策と仲間が集まれる空間を作るためにバーやラウンジをオープンさせているという情報でした。
この場合は、自分はオーナーでお店には立たず、内装にお金をかけて、マスターを雇うスタイルです。
2.平成の後半から現在
田舎などに増えているゲストハウス型のイメージ
古民家や空き家を、自分たちでリノベーションしていくスタイル。
SNSを使って情報発信しながら、同じようなお店に興味のある人に内装作業などを手伝ってもらう。
場合によっては、クラウドファンディングで足りない費用を補充しながら進める。
オープン前に仲間コミュニティを作り、そのコミュニティを中心に認知を広めながら商売していくイメージ。
お店をオープンした本人が店長として働く。
専業も兼業もどちらもあるイメージ。
3.本書のような方法が可能な現在と戦後の闇市
本書で紹介される方法は、最近では東京のような都会でも見つかるようになった家賃の安い店舗物件で、リサイクルショップや喫茶店などのお店を、格好つけるより先にオープンさせてしまうというものです。
居抜き物件などを利用して、最低限の内装、というか補修をしてお店を構えてしまう。
リサイクルショップや喫茶店も、オープンするには色々と手続きはいります。
でも、それさえクリアできれば、最低でも家にある古着やもらったまま箱から出したことのない食器セットを店頭に並べたり、コーヒーをそれなりに美味しく淹れられるのなら、お店を構えることはできますね。
で、ぼくがその姿を思い浮かべた時にイメージが重なったのが、戦後の闇市なんです。
闇市を簡単に説明すると、敗戦後の焼け野原になった市街地で、配給のお米や米軍の払下げ物資を国の許可なしに売買している人が増えていって、なんとなく市場のようになっていったんだと思うのですが、みんな生きるためにやむなく始めた商売ですよね。
名古屋駅の駅西と呼ばれる地帯にも、戦後は闇市が広がっていたといいますが、どこかで生活に必要なものを手に入れてきては人の集まる場所にお店を出して売ったり物々交換していたのでしょう。
少しずつ復興が進みものが手に入りやすくなるにつれ、スタンド型でジュースやお酒を売るお店が現れたと聞きます。
そういう場所には、コミュニティのようなものも徐々に発生していったのが想像できますね。
そういう闇市と呼ばれていた社会の姿と、この本で紹介されるお店の経営の姿がぼんやりと重なって見えたんですよね。
しょぼい起業は時代に必要とされるのかも?
終戦直後の人々のように手持ちがないなら、しょぼくて上等。
まずはお店を構える。
当然、店内の装飾は二の次。
まずは売る場所を確保。
人がある程度集まる地域で場所を確保し、まずはご近所さんが顔をのぞかせやすいお店を目指す。
ご近所の人にとって、
「あってくれると嬉しいかも。」
と思ってもらえるところから地域の小さなコミュニティができて、そこからだんだんと広がって行く、こともある。
表現が適切かどうかわからないけど、
地域のコミュニティに食べさせてもらう。
その姿って、昭和を知る世代にとっては、大型ショッピングモールとコンビニエンスストアが大量にできる前にはどこの町にもあった光景、構造だと思うんです。
どこの町にも必ずあったじゃないですか?
小さな本屋や酒屋さん、出前をしてくれたうどん屋さん。
そんなお店で交わされる、店主とお客さんの親しい会話。
それらがなくなった現在は、どこの町も代わり映えしない気がしませんか?
家の形も似ているし、お店も同じコンビニと飲食チェーン店の看板ばかり。
そのせいで、最近は若い人にも昭和レトロのビルや商店街を探索するのが流行っているんじゃないかな?
この本のしょぼい方法でできたお店は、もしかすると街の姿をアップデートするかもしれないですね。
無機質な町の景色に、少しだけ彩りを加えるかもしれないし、高齢者にも優しい気がするんですよね。
まとめ
働き方改革とか、高齢者に優しいまちづくりとか、えらい学者やシンクタンクが大手企業のビジネスとして成り立つように忖度しながら小難しいことを研究しているんだと思うんですよ。
でもさ、そんな小難しいことに身を任せるより、しょぼい起業をしたほうが現在の日本が抱える社会問題を改善するきっかけになるような気がするんですよね。
経済の効率化で、町のコミュニティがバラバラにされたけど、町にしょぼいお店ができれば、しょぼいからこそみんなで支え合おうという機運が生まれるかもしれない。
もちろん、商売は大変なことだと思う。
でも、トヨタが「終身雇用はもう無理~。」って言ってしまったんですよ。
このトヨタの発言は、日本のサラリーマン全員に対して
『終身雇用の時代は終わりました宣言』
と言っても言い過ぎではないですよね。
それなら、昔は当たり前だったお金持ちじゃない個人がお店を構える方法である、しょぼい起業方法も人生の選択肢として考えてもいいんじゃないかな?
と本書を読みながら思いました。
こちらの記事もどうぞ