今回、紹介する本は、小学生のころに心霊写真の本や番組をドキドキしながら観ていた世代は、全員読んだほうがいいと思う1冊。
日本のオカルト好きは今後、これを読んでいないとオカルトを語ることははばかられるくらいの1冊です。
って、流石にそれは大げさかな?
著者:岡本和明、辻堂真理
発行所:新潮社
初版発行:平成29年8月20日
現代ではありえない人生経験をしたカリスマ
中岡俊哉さんを知っている人は、相当なオカルト好きです。
ほんとにあった!呪いのビデオシリーズは全巻観ているけど、
「中岡さんって誰?」
っていう人も意外に多いかもしれませんね。
本書のタイトルにもあるとおり、コックリさんを日本で有名にした人で、こっくりさんの父というより、日本のオカルトの父、超能力の父といってもいい感じの人です。
理由は本書の重要な部分なので、あなたもぜひ読んで確認してもらいたいので割愛しますね。
それより本書の注目ポイントは、第1章から第2章にかけて語られる、中岡さんの若かりし頃の人生です。
もうね、これを激動の人生と言わずして、誰の人生をいうのか?
というくらい、小説の世界ような人生です。
はっきり言って、第1章から第2章だけでも読む価値あり!
なんです。
だって、戦後、生き残るために中国で工作員として活動していた。
だなんて、そんな人生想像できますか?
終戦直後の会社の社長やスポーツ選手などのカリスマ性のある人って、現代人では考えられないような人生を歩んでいる人が多いですよね。
たとえば、アントニオ猪木さん。
子供のころにブラジルへ移住して、過酷な労働環境の中生活していたそうです。
でも、あるとき、遠征できていた力道山の目に止まり日本でプロレスラーにあるんですよね。
その後の活躍は、多くの人が知るところですが、ストロングスタイルを確立して、プロレスで本当の意味での異種格闘技を実現させたのは、猪木さんの最大の功績じゃないでしょうか?
僕の身内の話をすると、ぼくのおじいさんは自ら会社を立ち上げた人だったのですが、子供のころ、一緒にお風呂に入るとき、いつもお腹にねじれたような傷跡があるのが気になっていたのですが、のちに聞いた話だと、戦争で出兵したときにお腹に銃弾を受けてできた傷なんだそうです。
何が言いたいかと言うと、終戦後に出世した人たちには、一癖も二癖もある人生を送った人がおおいんですよ。
でも、中岡俊哉という人の人生は、
「どうしてそうなる?」
と思わず口から出てしまうくらいの、ほかの人たちを大幅に上回るような奇想天外な人生なんです。
だから、本書はオカルト好きはもちろんですが、冒険小説などが好きな人も読んでみるとかなり興奮する内容だと思いますよ。
心霊写真をピュアに怖がった昭和
ほんの45年前まで、心霊写真なんてだれも意識していなかってんですよね。
それが、海外で、
写真に霊が写ることがある。
みたいなことが巷で流行って、それを日本に持ち込んだ人がいたんです。
しかも、本人はオカルトで商売してやろうとしたわけでなかったんですよね。
でも、いざテレビや雑誌で紹介すると、日本全国からわらわらと写真が送られてくるようになった。
それで、世界初の心霊写真集を発行したら、爆発的に売れて制御できないくらいの大ブームになったんですよね。
すると、それに便乗して悪いことをする自称霊能者だけでなく、宗教家まで現れた。
当時の日本人は、オカルトに免疫ができてなかったから、騙される人がたくさん出てしまった。
そんな詐欺師たちと戦いながら、最新の心霊や超能力事情を紹介し続けたのが中岡俊哉さんです。
そういう中で、心霊写真の鑑定や心霊が出ると噂のある建物の調査のニーズが高まって、宜保愛子さんなどのタレント霊能者がたくさん生まれたんですね。
とまあ、そんな感じが、ざっくり昭和のオカルトブームです。
余談ですが大百科にも心霊シリーズが?
ちなみに、ケイブンシャの大百科シリーズはしっていますか?
ガンダムや怪獣などの大百科や、昆虫やプロ野球の大百科に混じって、心霊系の大百科もあったんですよね。
その中に、たしか心霊写真のもあったはずで、ぼくも小学生のころ、本屋の大百科シリーズコーナーで心霊系の本を買って、家で友達と頭から毛布を被りながらこわごわページをめくったのを覚えています。
どうして毛布をかぶっていたかって?
怖いのを見ると、背筋が凍って寒いじゃないですか?
ついでに、読んでいる最中に雷が鳴ろうものなら、雰囲気はマックスでしたよ。
心霊写真を楽しむお約束ができあがった現在
2000年以降になってからは、
どうでしょうか?
1999年前後に、新興宗教とオカルトブームが巻き起こり、人の心につけ込んで高額のお布施や診療費を巻き上げられる人たちが社会問題になり、オウム真理教の大事件がテレビでオカルトをあつかうことを自粛させました。
それがだいたい、2015年ごろまで続いたように思います。
でも、視聴者離れが激しくなったテレビ業界がすがったのは、45年前の企画の焼き直しでした。
最近は、改編期ごとに心霊動画やUFOをあつかうオカルト特番を見かけますよね?
ただ、45年前と事情が少し異なるのは、現代人がオカルト詐欺を散々目の当たりにした1999年ごろまでの宗教とオカルトブームを直接、または間接的に体験しているところです。
さらに、スマホ1つで簡単に合成や修正ができるようになったことで、心霊写真やUFO動画を目の前にしても、大抵の人は一歩距離を置いて観ることができるようになりました。
そのせいで、オカルトは人を不安に陥れる道具から、楽しむエンターテイメントとして消費されるものになっています。
ただ、このエンターテイメント化を、もしいまも中岡俊哉が生きていたら、辛辣な批判をしていただろうな、と思うんですよ。
だって、中岡俊哉は当時から、心霊写真で恐怖を煽って高額のお布施を巻き上げていたエセ宗教やエセ霊能者を批判し叩いていた人です。
本人が心霊写真や心霊治療などを紹介していたのは、あくまで人間の持つ可能性や、現代医学では治療の難しい病を治せる可能性を真剣に探して世界をよくしようと考えていたはずです。
だから、自分で探しもせず、ましてや動画を制作すらせず、企画だけを何度もこすって、すでにDVDで販売されている心霊動画の一部を垂れ流すだけの現代のオカルト特番なんか、ボロクソに叩くはずですし、むしろそんな特番を潰すために最新の研究結果を特番やネット配信で発表したんじゃないかと思うんですよね。
「人の発明に負んぶに抱っこで、いつまで飯食ってやがる!?」
ってね。
いや、たった一つだけ褒めるかもしれない番組があるな。
ファミリー劇場で時々放送される、緊急検証!シリーズは、ある意味オカルト番組としての正当に進化した番組かもしれません・・・。
ちなみに、この章冒頭の写真をよく見てください。
岩肌にドクロのようなものが・・・。
終わりに
オカルトの語源って、『隠れるもの』という意味なんですよ。
実は、オカルトとして扱われる心霊や超能力、UFOなどが流行した背景って、それ自体がオカルト的だったんですよね。
研究者やマニアは知っていたかもしれないけど、オカルトが日本中に広まった歴史が、誰でも理解できるかたちでまとめられた資料的なものって、今までなかったと思うんですよ。
そういう資料的な価値を考えても、
本書『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』
は万人向けの1冊じゃないかと思います。
昭和のころテレビから流れていた心霊現象って、見世物小屋のような胡散臭さとか、番組が終わってから感じるモヤモヤとした気持ちがあったから面白かったんですよね。
だから、この本は当時は出版できなかったと思います。
当時、オカルト特番をドキドキして観ていた世代が大人になった現在だから、本書が面白く感じるんだと思います。
とはいえ、本書を読んでもオカルトの面白さが消えてしまうことはありません。
むしろ、中岡俊哉という人の功績を知ると、オカルトがさらに深みのあるものに変わるはずです。
心霊や超能力が好きな人は、ぜひ読んでみてください。
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