沖縄はいいよな~。
(志村けんのいいよなおじさん風で。)
沖縄は大好きで、毎年1度は遊びに行きたい、いやここ数年は実際に行っているんですよ。
空港で飛行機から降りたときの、本土とは違う空気の重さや肌触り?
居酒屋の千ベロで、お酒が2杯ついちゃう感じ?
全国のジュンク堂と同じはずなのに、沖縄本コーナーに立ったときのワクワク感?
でも、沖縄のきれいな景色に触れたとき、本当に沖縄が好きなら見ないふりはできないことがあるんですよね。
今回紹介する本は、沖縄の苦しみと寄り添う、そんな1冊もしれないです。
沖縄 若夏の記憶
著者:大石芳野
発行所:岩波書店
初版発行:2016年7月15日
岩波現代文庫シリーズの1冊です。
本書は、著者が沖縄返還直後から定期的に沖縄を訪問し、現代まで写真やその土地で暮らす人から聞いた話を記録し続けたものをエッセイとしてまとめたものです。
体裁はフォトエッセイですが、中身は沖縄の戦前から戦後、現在までの沖縄の人たちが戦争や炭鉱の時代に受けた痛みの体験談などの市民目線の歴史から、基地問題についても書かれていて、比較的重めのないように感じました。
沖縄のレジャー以外で、市民の暮らしについて語ろうとすると、基地問題はどうしても避けられないんでしょうね。
基地問題となると、一歩引いてしまう人もいるかと思いますが、本書では戦争を実際に体験した人たち、命令で疎開させられた先でマラリアに苦しめられた人などの体験から、どうして基地がなくなって欲しいのか?ということが体験者の気持ちとして綴られています。
だから、基地について書かれているといっても、それはあくまでもそこで暮らしている人たちの記憶なんですね。
そこには、楽しい記憶もあるけど苦しい記憶も当然あって、その記憶を語るときに怒りの感情が出るのは想像できると思いますが、家族が目の前で爆撃され吹き飛んだ悲しい感情だってあるわけです。
ちなみに、もう少し基地問題を知りたいと思ったら、一緒にこのドキュメンタリーを観るとさらに深まるんじゃないでしょうか。
標的の島 風かたか
ウルトラマンファンにもオススメかも
直接戦争とは関係ないですが、ウルトラマンの脚本家だった金城哲夫さんとその家族の壮絶なお話も出てきます。
ウルトラマンは、当時の社会情勢や環境問題などをストーリーの裏テーマにしているシナリオも多く、金城氏の手がけたシナリオも沖縄戦争などの経験が根底にあると分析する人もいます。
金城氏の帰郷後について、本書はけっこう深掘りして書かれているので、ウルトラマンファンにも貴重な一冊じゃないかと思います。
沖縄の工芸は面白い
もちろん、沖縄の文化、工芸についても書かれていますよ。
本書に出てくる品は、本土の効率や密集した空間ではなかなか生まれないだろうな、と思えるような、いい意味での沖縄のおおらかさを感じました。
伝統的な織物
宮古で絣織り(かすりおり)をしている人のお話があるんですね。
いわゆるUターンをして、絣織りをしている女性です。
絣織りというのは、琉球時代からの伝統的な技法で、日本でもよく見かける織物ですが、どのようなデザインが有名か?沖縄と本土のデザインの差などは文字で表すのが難しいので、気になる方はググってちょうだい。
海外から輸入される安くて、しかも質も悪くない絣織りに対して、どうしても高額になってしまう織物に、どんな価値を見出していくのかが描かれています。
トンボの羽
超極細の糸で、まるでトンボの羽のように透ける布を織っている人がいるんですって。
その人は、そのオリジナルな技法を、『あけずば織』と名づけたんだそうです。
『あけずば』とは、琉球の古語で『トンボの羽』のことなんだそうです。
この織物を作るようになった経緯など、興味深いですね。
昔の紙
雁皮を使った、昔の紙を復活させようとしている人の話もあります。
雁皮は紙の材料に使えるまで成長するのに20年かかるんだそうです。
だから、現在育てている雁皮は自分が老人になったときにやっと使えるようになる、すごく気の長い仕事なんですね。
それでも、雁皮に惚れ込んでいるなんて、素晴らしいじゃないですか?
最後に〜デリケートな問題を抱えた沖縄とぼくたち
個人的には、右とか左という狭い世界観で沖縄を語るのは好みません。
でも、沖縄を少しだけ深く知ろうとしただけでも、戦争などの被害を受けた地域という一面から目を剃らせないのも事実かなと思います。
本書を読むと、沖縄の人たちがこのままでは戦後の状況から新たな時代へ進めない理由が少しだけですが見えてきます。
沖縄の基地問題ってやっぱり、デリケートじゃない?
でも、そういう問題を理解しようとせずにレジャーを楽しむだけ楽しんだら、「さようなら~。」っていうのはなんだか、沖縄に住むひとの家に土足で上がってご飯を食べて、住んでいる人は御構いなしに大声で歌ったりクラッカー鳴らして騒いだあとで、片付けもせずに無言で帰っていくみたいで恥ずかしいというか、怖いというか。
いや、そもそも沖縄を家族と思えないことが、沖縄を置き去りにしている原因の1番目の問題という気がするし。
ん~~~、考えすぎかな?
すごく単純な話、ぼくたちは現在でも未来でも、カルチャーとして見ても、遊び場として見ても、自然の学び場として見ても、もう沖縄なしでは難しくないですか?
沖縄の空気を思い出しながら本書を読んでいると、そんな思いが浮かんでくるんですよね。