ストレイバード はぐれ鳥の止まり木

社会のはぐれ鳥 ストレイバードのブログです。主に昭和レトロで微妙な本、珍本、奇本を中心に紹介しています。

アイドルとプロレスには読み込みが必須なのです。

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アイドルとプロレスは、むしろ読んで楽しむものです。

 

 

 

みなさんは、IDOL AND READという本、知ってますか?

 

IDOL AND READ

IDOL AND READ

 

 

最近、アイドルをテキストで紹介する本が結構出ているんですよ。

 

インタビューなどを通じて、曲やグラビアでは見えないアイドルの内面を見せていく、文科系的アイドル表現方法とでもいいましょうか。

 

アイドル文化がサブカルチャー化する過程で、アイドルをこれまでとは違う視点で切り取る方法が、ほとんど文字だけで構成された雑誌というのはすごく面白いですよね。

 

ボクはこの雑誌と、ほぼ文字で構成されたプロレス雑誌、KAMINOGEが好きです。

 

KAMINOGE 80

KAMINOGE 80

 

 

どこに魅力を感じるんだろう?

 

カメラでピントがビタッと合って会心の写真が撮れるかのように、アイドルもプロレスもライブや試合までに起こる挫折や遺恨の物語の輪郭がファンの中でクッキリとすればするほど、本番は『エモく』なるわけです。

 

つまり、文字ばかりのアイドル、プロレス雑誌は、ファンがライブや試合を観戦しに行くのではなく、参戦するために必須のテキストなわけです。

 

そう!

アイドルのライブもプロレスの試合も、もう観戦するものではなく、参戦するものなのです。

 

 

 

でも、面白いと思いませんか?

 

可愛さを愛でる対象であったはずのアイドルが、

 

肉体のぶつかり合いを見て興奮していたプロレスが、

 

現在は、そのライブ、その1試合のバックグラウンドに流れる物語、

 

あの子がアイドルを目指した理由とそれまでの生い立ち、

 

メンバーが突如引退してしまってからの葛藤、

 

プロレスラーがチャンピオンに噛み付いた裏にある物語、

 

それをあらかじめ知っておくことによって、長い時間軸で複雑に楽しみ続けるエンターテイメントに進化しているんですよ。

 

 

アイドルの世界

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グループによっては、アイドルのライブ会場には中年と女性ファンがすごく多いんですよね。

 

そんなファン層が増えた理由は、アイドルとの距離感が変わったからでしょう。

 

早見優や全盛期の酒井法子などが活躍していた、ひと昔前のアイドルはプロフィールから休日の過ごし方まで全てがファンタジーで塗り固められていました。

 

「好きな食べ物は?」と聞かれたら「いちご」と答えるやつですよ。

 

それが、最近は年齢や趣味を正直に答えるアイドルが非常に多くなったんですよね。

 

ボクはアイドルに関してはすごく偏った知識しかないので、ディープなところまではわかりませんが、アイドル戦国時代を声高に叫んで一気にブレイクを果たしたももいろクローバーZは、好きな食べ物をスルメなどのお酒のつまみのような、男女問わず「やっぱりそれって美味しいよね!」と共感したくなるものを挙げ、実際に美味しそうに食べたわけです。

 

そして、決してうまいとは言えない歌唱力で歌いながら全力で踊ることで、見ている人に『エモい』と言われる感情を引き起こしてファンを増やしていったんですよね。

 

でも、ももいろクローバーZは、実は共感を引き起こしてファンを増やしたわけではないと思うんですよ。

 

どちらかというと、全力と無邪気さで、まるで自分の娘か妹のような親近感を生みだしてファンを増やしたんだと思います。

 

蛇足でいうなら、1万人以上の大きな会場を満員にできるようになってからは、ゲストにさだまさしを代表とする大ベテランと共演させることによって、ももクロを孫のように感じる初老以上の年代まで認知度を拡げていますよね。

 

ということは、場合によっては露悪的に見えるようなぶっちゃけかたはさせていません。

 

ということは、ももクロは現在『エモい』と言われるアイドルとは別の系譜でしょう。

 

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では、現在の『エモいアイドル』像を作ったのは、どのグループだと思いますか?

 

ボクは、でんぱ組.incとBiSじゃないかと思っています。

 

この2つのグループは、毛色はかなり異なるのですが、どちらもコンプレックスと挫折した過去を隠さず発信することでアイドルであるにも関わらず人間くささを共感力に変え、同じような悩みを持つ人たちをファンにしていったんですよ。

 

ただ、でんぱ組.incとBiSでは、発信する内容とその後の展開が逆方向といってもいいくらい違います。

 

でんぱ組.incは、引きこもりだった過去などを発信し、途中のグループとしての挫折も隠さず語ることで、ファンはそんなメンバーと一体になって頂点を目指す!

みたいな感じになっていった、はず。

 

 

一方のBiSは、挫折が過去というよりは現在進行形で展開していく感じで、ご存知の方も多いと思いますが話題になるのなら裸でも喉ちんこでも、メンバー同士のいざこざでも公開して知名度を上げ、曲を聴いてもらう戦略をとったグループです。

 

どちらのグループも、実は曲がいいということが伝わって従来のアイドルファンだけでなく、ロックやパンクのファンを新たに開拓していったところに特徴があります。

 

特にBiSは、曲がアイドルファン以外も受け入れやすい良曲ばかりな上に、プー・ルイという依存のアイドル像をぶっ壊す破天荒なキャラでありながら歌うとエモさが爆発するというリーダーのおかげで、ライブも既存のアイドルとは別物の破壊力がありました。

 

現在、ロック色を強く押し出してライブでも絶叫したりダイブをするアイドルグループが増えましたが、これこそBiSが開拓した、可愛さは二の次にした『エモいアイドル』というジャンルが根付いた証拠でしょう。

 

余談ですが、新生BiSの姿を見ていると、『エモい』と『アツい』は似て非なるものなんだな、ということがわかるというか、一部のメンバーにそろそろわかってほしい・・・

 

 

ちなみに、BiSがどんな戦いをしていったのかを知りたい方は、OTOTOYのインタビューは必須です。

ototoy.jp

 

 

プロレスの世界

 

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さて、プロレスについては30年くらい前のボクが高校生の頃は、正直に言って観客は粗暴な人が多かったですよ。

 

ファンでごった返したグッズ売り場の前で、肩がぶつかったからって罵声を浴びせてきたり、リングに物を投げ入れたりする人、本当にいましたからね。

 

でも、現在はご存じの方も多いでしょうがリングサイド席には若い女性が多いし、男性客もマナーのいい人が多くなったように思います。

 

プロレスにマナーのいい観客が増えた理由はアイドルとは逆で、何でもありからイメージの絞り込みへのシフトが成功したんだと思います。

 

そして、成功した理由はやはり、新日本プロレス棚橋弘至さんの影響が大きいのではないでしょうか?

 

棚橋さんは、プロレスがリングスやK-1などの格闘技人気に追いやられて影が薄くなってしまった、いわゆる『プロレス冬の時代』に、プロレスの定義をし直した人だと思うんですよ。

 

格闘技ブーム以前のアントニオ猪木が築いたストロングスタイルは、力道山の頃の日本人が外国人を倒すというカタルシススタイル』から、空手や柔道、果てはプロボクシングの象徴とも言えるモハメド・アリとの異種格闘を展開するに至る『プロレス最強ビリーバースタイル』への拡大定義でした。

 

あえて拡大定義としたのは、『カタルシススタイル』と『プロレス最強ビリーバースタイル』のどこが違うのかを考えると理解してもらえると思います。

 

 

カタルシススタイル期

 

この頃の庶民がプロレスに求めたものは、敗戦の悔しさと欧米人に対するコンプレックスに対する憂さ晴らしでした。

 

まだテレビがそれほど普及していなく、街頭テレビなんていうものがあった時代で、一般庶民の持つ情報量、つまり知っている世界がまだまだ狭かった時代では、『日本人=自分達』が『欧米人=超えられない壁』を倒すことでカタルシスを感じるための舞台としては、プロレスのリングという限定された世界だけで十分でした。

 

 

プロレス最強ビリーバースタイル期

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しかし、そのスタイルも高度成長期になりバブル時代を頂点に役目を終えます。

 

なにせ、高度成長期に入ると総中流社会と言われるくらいみんなが豊かになっていき、テレビや自動車が一家に一台あるのが当たり前になっていくと、「俺たち結構すごいんじゃない?」といった感じで自己肯定感も上がっていきました。

 

そして、1989年には三菱地所がニューヨークのロックフェラーセンターを買収するという、最大のカタルシスを経験したんです。

 

このように、バブル時代は日本人から敗戦によるコンプレックスを消し去ってしまったので、プロレスファンは日本人が欧米人を倒してもカタルシスを感じなくなったんですね。

 

実際に、1980年前後には「プロレスなんて八百長だろ?」という風潮が起こり、プロレスラーの強さを疑う人が増えていたようです。

 

そうなると、プロレスも庶民の感覚に合わせて次のステージに進む必要がありますよね。

 

そこでアントニオ猪木が発明したのが、異種格闘技だったわけです。

 

強さを証明するのにこれほど分かりやすい方法はないですよね。

 

なにせ、他の格闘技と実際に戦って勝敗をつければいいわけですから。

 

しかもこれって、子供から大人までプロレスが少しでも好きなら一度は妄想したことがあるじゃないですか?

 

「猪木とアリが戦ったら、どっちが勝つんだろう?」

 

「プロレスラーはタフだから、ボクサーのパンチなんか効かない!」

 

「ボクサーはバックドロップなんて経験したことがないだろ」

 

「いや、プロレスラーにはボクサーを捕まえることすらできない!」

 

「ボクサーのジャブは避けられない!」

 

「いや、でも、、、、」

 

と頭の中で延々と続く妄想にニヤついていたことがあるのは、ボクだけではないはず!

 

 

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再び冬の時代へ・・・

 

そんな、妄想の中でしか実現しなかった対戦が現実になったんですから、それはみんな食いつきますよね。

 

そんな夢の実現でプロレス最強伝説を作っていたはずが、K-1やPRIDEによって躓き始めます。

 

プロレスが総合格闘技の大会に参加しだしてから、雲行きが怪しくなったんですよね。

 

割と負けることが多くて、再び最強を疑い出す人が増えだしてプロレス人気が陰りだしたんですよ。

 

そして、プロレスに失望して一気にファンが離れる原因になったと思われる試合が、高田延彦VSヒクソン・グレイシー戦じゃないですか?

 

あれで、プロレスファンが最強を信じられなくなった。

 

というか、夢から覚めて「プロレスは強い!」と言えなくなってしまった。

 

これはもう、プロレスが死んだといってもいい出来事だったと思います。

 

ですから、そこからもう一度プロレスの存在意義を作り直すのが難しく、それこそツンドラ級の冬の時代に突入してしまったんですねえ。

 

 

そして太陽は立ち上がった

 

実際に観客が大幅に減り、コアなファン以外は見向きもしなくなった中で、もう一度プロレスに熱狂してもらうために戦っていたのが棚橋弘至その人だったんです。

 

棚橋弘至がプロレスを再定義するために参考にしたのは、仮面ライダーや漫画の世界のヒーロー像だと思います。

 

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ビジュアルも技も派手で、とにかくわかりやすい格好良さを見せていった。

 

ヒーローには欠かせない、キメポーズも作った。

 

会場に来てくれたファンに、ど直球で「愛してまーーーす!!」と叫んだ。

 

プロレスをPRできるなら、バラエティ番組でもイベントでもどんどん出た。

 

そうしているうちに、強くてカッコいいプロレスラーは新たなファン層を開拓したんですね。

 

それが、過去にはほとんどいなかった一般女性なんです。

 

昔は、プロレス会場にいる女性といったらヤンキーかキャバクラで働いているっぽい派手な人しかいなかったですよねえ。

 

それが、現在のプロレス会場は、リングサイド席におしゃれなファッションをした普通の女性がたくさん座っています。

 

そんな会場の異変をテレビ番組などが取り上げて、「あれ?最近のプロレス、どうなってるの?」と興味が湧いたオールドファンがまず食いつき、次いで「若い女性が夢中になっているプロレスって何?」と様子を見ていた過去にプロレスをほとんど見たことのなかった人たちが、派手でかっこいいアクションの技に魅了されてファンになっていったんでしょう。

 

もっと言うと、いざプロレスを観出すと、本来はヒールであったはずが、実はスウィーツ好きと言う激しい高低差の魅力を持つ真壁刀義選手など、ハッキリとしたキャラクターを持った選手がたくさんいて、ストリートファイターのキャラクター選択のように棚橋選手以外にも自分に合った選手が選べたんですよ。

 

つまり、「プロレスは最強か?」を追求する世界から、新たなファンを開拓することによって「ヒーローたちが強さを競う」世界にシフトチェンジしていったんです。

 

そうやって、棚橋選手を中心にプロレスは新たに『みんなのヒーロースタイル』として再定義することに成功したのでした。

 

一方で、新日本プロレスの選手を中心に、ストロングスタイルを放棄したわけではないんです。

通好みの攻防も健在なので、プロレス通も十分楽しめる試合になっているんです。

 

それを証明したのが、天龍源一郎選手の引退試合の対戦相手をしたオカダ・カズチカ選手じゃないですかねえ。

 

 

これも余談ですが、棚橋選手は現代プロレスの象徴と言うだけではなく、過去に付き合っていた女性に刺されるという事件を起こしているので、そういう意味では力道山の後継者といってもいいかもしれません?

 

 

こうして日本はエモくなってゆく

 

こうやってヒーローたちの世界を気づくことで、プロレスもアイドルと同じような『エモい』場を作り上げていることができているんだと思います。

 

そして、どちらも『エモい』から現場に参戦したくなるし、語りたくなるんですよ。

 

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日本の文化は、どんどんサブカルチャー化していってるんでしょうね。

 

楽しみ方が、今後ますますマニアックになっていくのでしょう。

 

仕事も趣味もきっと、この発想が大切になっているんだと思います。

 

 

 

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渡辺淳之介:アイドルをクリエイトする (MOBSPROOF EX)

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