全面戦争だプロレス 長州力の一人一殺
著者:長州力
出版社:ワニブックス
初版発行:1984年5月5日
ちなみに、7月20日に16版発行という、今の作家には夢のような話
この本は、脂が乗り出したころの長州力さんが書いた感じかな?
なんか、グワー!っと前に進んでいるパワーがみなぎっている感じです。
私がテレビで観ていたころの長州さんは目がギラギラとしていて、リキラリアートを叩きつける前に、相手を百獣の王が獲物を仕留めるために冷静に忍び寄るときにそっくりな目つきをしながら背後ロープまで回り込んでいく姿に興奮したものです。
UWFの安生と対戦するときも、技よりなにより全身から噴き出る気で圧倒していまいそうな勢いがありましたね。
といいつつ、最近KAMINOGEでたまに山本くんと対談している時の長州力さんも好きです。
みんな、バラエティに出ている姿を見て丸くなったおじさんと思って笑っているけど、それは違いますよね。
なんかもう、無駄な力の入っていない達人のような、余計な縛りが解けたような自由さを感じるませんか?(あ、完全にプロレスファンしか共感できませんね。)
この本を書いたころから戦いまくって、それが結果として猪木や馬場を超える偉業を成し遂げたのかはわかりませんが、プロレスをリングの内外でやりきったことが現在のあの姿として現れているんですよね。
カッコいいです。
野次馬って30年前から変わっていないなあ
そうそう、プロレス本のあるあるなんですけど、長州さんも本書のいの一番に噛みついているのが、プロレスを八百長だ筋書きありだと知ったかぶりして横槍を入れる人たち問題。
まったく、当時は年間300試合以上、バックドロップやラリアートを受け続けながら芝居を続けられるならやってみろ!と野次馬どもに言ってやりたいですが、この八百長だなんだと批判する人たちの話を聞くたびに、現在のSNS炎上させている人たちと同類なんだろうなと思うわけですよ。
30年前はインターネットがまだなかったから、対して根拠のない批判や悪口を言っていても拡散力は知れていましたが、現在は大して興味を持っていない人の目にまで入ってしまうほどの拡散力を誰でも持てるようになったんですよね。
でも、批判の根拠は30年前と同レベル。
すごく薄い情報を根拠に、あーだこーだ言ってるだけなんですよねえ。
プロレスなんて、一度会場でマットに叩きつけられる音を聞けば、少なくとも自分が思っているほど簡単にショーとして成立させられる代物ではないということに気づくと思うんですけどね。
厳しい鍛錬に耐えられるのはなぜか⁉︎
の章での答えがいいなあ。
忍耐や根性なんて言葉はどうでもいい。
結果として周りの人が、この人は努力の人だなどと評価してくれるだけだ。
すべては、自分自身にかかっている。
30年後の今読むと、なおさらグッとくる言葉です。
あと、この本で当時からそうだったのか!
と気づかされてエモくなったところは、
長州さんがアントニオ猪木さんをすごく尊敬していて、それを隠さず話しているところです。
その証拠と言っていいのかわかりませんが、あとがきにあたるところはアントニオ猪木さんが書いているんですよ。
猪木さんからが厳しい言葉だけど、はっきりとエールとわかる言葉をかけているんですよ。
このあとがきを読むだけでも、この本の価値はありますね。
ちなみに、
なんていう章もあります。
ここでは、長州さんはアンチジャイアンツだったということだけ明かしておきましょう。
現在もアンチジャイアンツなのかは、知りません。
やっぱり、プロレスっていうのは時代とともに試合の結果と本書のようなテキストが残っているから、振り返ったり想像したりする余地が沢山あって、いつまでも楽しめていいですよね!
あ、ちなみにタイトルの吉田さんっていうのは、長州さんの本名、吉田光雄さんのことね。