観察の練習
著者:菅俊一
発行所:NUMABOOKS
初版発行:2017年12月1日
本書は、著者が違和感や意外に感じた風景を写真に撮り、その風景から普段は当たり前に感じて見過ごしていることや、思い込み、「ある工程を踏んだことによって起きてしまったんだろうな」という気づきをもとに、クリエイティブな人に必要な観察力を磨く方法を実践形式で記した本です。
VOWのアカデミー版みたいな感じ。
違うか?
この本は、サイズが可愛いんですよ〜。
ハガキよりちょっとだけ大きいくらいのサイズ。
でも、製本はメチャクチャ凝っていて丁寧。
表面に光沢を載せているんだけど、これシルクスクリーンでやったのかなあ?
これくらいの厚みなら、オフセットのUVニスでもできなくはないか。
可愛いから、プレゼントしてもいい感じです。
人の脳はエアコンよりも昔から省エネ機能付き
例えば、ビルなどの壁を這うパイプが赤や青に色分けされているのを見たとき、ビル側の目的は色分けすることによってどのパイプに水が流れていて、どのパイプに電話線などが通っている、などがすぐにわかるようにしているだけなのですが、人によっては赤いパイプを見た途端『ケチャップが流れている』ように、黄色は『マスタードが流れている』ように思えてきて面白くなっちゃう場合があって、それはその人の中で赤い色とトマトが紐付けされているためで、
「赤といえばトマト!」
「パイプといえば流すためのもの!」
「トマトとパイプとくればトマトケチャップ!」
という感じに脳が勝手に連想ゲームをしてしまうんですよね。
そうやって、人間というのは記憶を関連づけしパターン化しておくことによって、危険を素早く察知したり、2つのことを同時にできたりするわけです。
でも、その能力に頼りすぎちゃうから、たまに道端に落ちてるロープを蛇と見間違えてビックリしたり、かき氷にかかっているシロップの味はみんな同じなのに赤ければイチゴ、緑ならメロンの味がしているような気になっちゃうんですよ。
そもそも、メロンが緑色なのは外側の皮の部分で、果肉はオレンジ色だったりして、あっても薄ーい緑色じゃないですか。
でも、かき氷に緑色のシロップがかかっていると、誰も「あ、きゅうり味かも。」「もしかしてゴーヤ味?」なんて疑わないんですよ。
「食用色素の緑色だ。」と思う人は、職業病です。
ああ、脱線しすぎだ。
カフェのトイレで手を洗う時は?
環境に優しい洗剤の話が出てくるんですけど、ボクの日常の例を出すなら、カフェやデパートのトイレを使ったとき、洗面台に除菌アルコールがあればそれを石鹸がわりに使うんですよ。
なんでかと言うと、会社で研究開発してた頃の経験で、ビーカーとか実験装置を掃除するときにエタノールを使っていたんですよね。
みなさんも、学校で理科の実験などで使ったことがあるかもしれませんが、大雑把に言うとエタノールは汚れをよく溶かして取り去ることができます。
石鹸は界面活性剤なんかで汚れを包み込んで浮かせることができますが、基本的にはエタノールも石鹸も油の仲間で、汚れ成分とよく馴染む、言い方を変えればよく溶けるわけだ。
だから、手の油脂成分とその上に乗った色々な汚れは除菌アルコールでもよく落ちる。
しかも石鹸よりも水ですぐに洗い流せるし、多少残ってもすぐに揮発して乾くから楽!
という自分勝手な理屈を脳内で繰り返しながら手を洗っています。
これも、『汚れを落とすためには石鹸を使う』という先入観に囚われていないか?
ということを問う例じゃないかと思うんですけど。
もちろん、うんこが手についちゃった時などの汚れ方がドイヒーな時は石鹸を使いますよ。
界面活性剤が存在するのには、ちゃんとした理由があるわけですからね。
実は、研究開発する人間にとっては必須の能力
目の前にあるものから違和感を感じる能力というのは、研究や開発をする人間にとってはなくてはならない能力の一つで、ボクの個人的な経験からいうと、これがなければPDCAサイクルを回す意味なんてないし、そもそも開発するテーマすら見つけられないからいつまでたっても作業員としての役割しか回ってきません。
やっぱり、違和感を感じるから、従来より安く製造する方法を思いついたり、製造ミスの原因を察知して改善することができるんですよ。
ボクの経験でも、あるものを開発していた時、常に同じ分量、同じ手順でサンプルを作るのですが、毎日作るたびに性能が変わってしまい安定しませんでした。
そんな中、失敗作としてゴミ箱に放っていたサンプルが気になり調べたところ、ものすごくいい性能だったんです。
それで、改めて過去の条件などを調べて行くと、天気が性能に影響していることがわかったんです。
晴れの日と雨の日の湿度の差が意外なほど影響していたんですね。
こういうことって、指示されたままに作業をしている人では気づけないものなんです。
ボクが社会人の頃にやっていた物事を斜めから見る癖をつける練習の経験から見て、この本を真似して練習するだけでも、他の人より勘が働くようになるはずです。
クリエイティブに生きてみたい人は、参考にしてみてはいかがですか?
あ、ちなみに上の草むらの写真、
よ〜く観ると黒猫が隠れているの、気づきましたか?