いいよ、いい。
この本は印刷出版業の矜持を感じる。
こんなデザイン、今時の印刷会社でよくできたものだ。
まだ、職人気質な社員が残っている印刷会社だったのだろう。
コストばかり気にして人材派遣社員を増やし、熟練社員を軽んじてきた会社にはなかなかできない仕事だ。
- これからの本屋読本
- 冷麦はいい。
- いったい、いつまでこのズルズルは続くというのか?
- いい大学いい会社で死ぬまで安心教
- 本屋になること
- 違和感の正体は、やっぱり、お金の頂き方だ。
- どれだけ否定しようと、近い将来、仕事は減る。
これからの本屋読本
著者:内沼晋太郎
発行所:NHK出版
初版発行:2018年5月30日
この本、結構前に読み終えていたんだけど、ブログを書こうとしてもなかなか中身が固まらずにズルズルと時間が過ぎてしまった。
その間に、どれだけの回数、冷麦をズルズルしたことか。
最近、ボクの中ではラーメンブームが過ぎ去ってしまったため、もっぱらズルズルするのは冷麦が素麺だ。
冷麦はいい。
どんぶり一杯いける。
ちなみに、薬味はしそとミョウガを刻んだものがお気に入りだ。
ネギは個人的には風味が強すぎて好きじゃない。
どうだ?
今日も何を書くか決めきれないまま、冷麦ズルズルについてここまで来てしまった。
人生はこんな感じで、やると決めてから、まるでパズルの1ピース目をどれにするか迷うように、なんだか決め手に欠けたままズルズルと時間が過ぎてしまうことなんてよくあることだ。
でも、このズルズルとしてしまっている時間の中には、自分の本心が顔を出している。
冷麦をズルズルしている時間の中には、麺つゆの鰹と醤油の香りと旨みが顔を出すくらいだ。
麺つゆは無意識に美味しさを感じていればいいさ。
でも、自分の本心を気づかないフリして、「オレの人生(アタイの人生)美味しいだろ!」
なんて言って盲進すると、
「サイコーですかー?」
「サイコーでーす!」
「キャンと言ったらキャンセルできます」
と鼈甲メガネに言われているにもかかわらず、キャンセルできない人生に陥るのかもしれない。
ああ、恐ろしい。
まだ本題に入っていないにもかかわらず、ここまですでに600字近く書いているようだ。
いったい、いつまでこのズルズルは続くというのか?
冷麦なら、6把分くらいだ。
どうして冷麦6把分もズルズルとしてしまうかというと、本書に書かれていることが人ごとじゃないからなのだ。
小学生の頃、学校で将来の夢を聞かれて答えたのは『花屋』だった。
これには特に理由はなくて、先生から夢を決めろと急かされ、サラリーマンにだけはなりたくなかったボクが苦し紛れに言った夢だったのだ。
中学の頃にも先生から、将来の夢を書けと言われた。
中学生で夢や目標が決まっていない奴は、ダメな奴だったらしいのだ。
でも、
いい大学いい会社で死ぬまで安心教
というカルト宗教に日本全体が洗脳されていた時代に中学生だったボクは、夢なんて真剣に考えたこともなかった。
考え方すら知らなかったと言ってもいい。
でも、やっぱりサラリーマンにだけはなりたくなかったボクが出した夢は、
本屋になること
だった。
これは、途中で古本屋に心揺れたりしながらも、なんだかんだで今もボクにとって夢を感じる仕事のままだ。
そして時は流れ、現在は瀬戸市の味のある建物の一室を借りて、読書が好きな人、本が好きな人がのんびりと読書をしたりお話をしたりできる場を作ろうと、ストレイバードをオープンさせた。
でも、いざオープンさせてみると、なんだか違和感を感じてしまい、とりあえずは仲のいい友達を招き入れるか、毎月20日は他の部屋と合同公開日になっているので、誰でも入れるようにはしている。
違和感の正体は、やっぱり、お金の頂き方だ。
ストレイバードは正直に行って、すごく狭い。
書籍の数も、意図的にかなり少なくしてある。
でも、人が出会うスペースとしては十分じゃないかな、とは思っている。
ボクのもう1つの顔は、カウンセラーだ。
人生に関すること、研究開発に関すること、その人、その会社が悩みから解放されるきっかけ、気づきに導く役目だ。
だから、というわけでもないが、本に関わることも一種のカウンセリングととらえている。
ふらりと立ち寄った本屋で偶然視界に入った本から、半年間考え続けていた仕事の悩みが解決することがある。
人生のどん底な気分の時に、偶然手に取った本に励まされて壁を突破するだけの力が湧いてくることだってある。
カウンセラーと本の役目って案外、
意図的に気づかせるか、
偶然に任せるかの違いくらいしかないのかもしれない。
そういう場をオープンする際、一般的なお店と同じように、特定の曜日の何時から何時までは必ず開けるという方法がいいか、それとも予約制にして予約があった時間だけ開ける方がいいか、という部分も考えどころだ。
ただ、個人的には重点テーマが、実は、あるのだ。
それは、
『好きなことをユルイ発想、ユルイ計画で肩の力を抜いて続けられる社会』
「仕事をナメるな!」
「そんなことで生活できるわけないじゃん、バカじゃないの?」
とまだまだ賛同を得られないが、ボクは真剣だ。
どれだけ否定しようと、近い将来、仕事は減る。
経理、製造、営業にいたるまで、人工知能が代わってできる作業と、過去の履歴から予測可能な業務の最適化で、人の仕事は減る。
それくらい、少なくともこの20年は、大企業の衰退が物語るように、日本は独自の産業を生み出すのをサボりすぎた。
だから、以前なら鼻で笑っていたオタクたちの楽しみを、急にクールジャパンと持ち上げて消費し、観光立国などという言葉でお茶を濁している。
そんな日本社会で、いざ人工知能に仕事を奪われて会社から追い出される日が来たとき、とりあえず何をしたらいい?
本が好きな人なら、まずは本と関わろうとするんじゃないだろうか。
本書は、いずれは本に関わりながら生きてみたい、と考えたことのある人は目を通したい一冊だ。
長井秀和に言われるまでもなく、
間違いない。
プラモデルが好きな人なら、本書の後半の章を読むときに、本の部分をプラモデルに置き換えて読むといい。
フラワーアレンジメントでも、レコードでも同じように読めば、きっと一歩を踏み出す勇気が出てくるだろう。
間違いない。
と、趣味の本に囲まれた部屋の片隅で愛を叫ばず、
万華鏡を作りながら思うのだった。