10代最後に出会った、ボクの人生観を変えた1冊です。
デザイン原論
著者:河北秀也
出版社:新曜社
初版発行:1989年5月15日
こんにちわ〜。
地下鉄に乗るために改札口を通ったその先の通路に、毎月いいちこのポスターが貼ってあるのを見かけると、いつも思わず立ち止まってしばらくの間眺めてしまいます。
中でも、銀に輝くいいちこのポスターを見かけると、
「クリスマスか、年末だなあ。」
としみじみ思うんです。
いいちこのポスターって、地下鉄の壁に貼られるポスターの中でも特に異彩を放っていて、孤高と広告ポスターの矜持を感じます。
[はぐれもの]
はぐれものって、どんな群れにも一定数いるもので。
野生動物の群れですと、みんなで移動している中、1頭だけ群れから離れてフラフラと歩いているヤツがいると。
まあ、普段は組織を乱すヤツとして疎まれるか、最初からいないものとして無視されているかです。
でも、群れを襲うものが現れた時、真っ先に狙われるのははぐれてもので、はぐれているヤツが襲われている隙に群れは逃げることができます。
一方で、いつもの場所に餌となる植物がなく群れがピンチになった時、新しい餌場を見つけて群れを助けることになるのは、案外はぐれものだったりするんですよね。
[浪人生の運命の出会い]
ワタシは昔から、自分で納得できる理由がないと全く行動できないタチだったんですよ。
で、大学進学というのが自分の中で理由付けできなかったワタシは、受験したものの受かるはずもなく浪人生活を送っていたんですね。
「大学なんてなんで行かなきゃならないのか・・・
とはいえ、周囲から大学進学のプレッシャーが・・・」
という中で、血迷ったんでしょうねえ。
「美大へ行けば、何かが見つかるかもしれない!」
と思い、美術関連の勉強をしようと本屋へ向かったんですよ。
そこで見つけたのがこの、「デザイン原論」だったんです。
手に取った理由は本当に安易で、
「原論なんていうタイトルだから、これを読めばデザインが理解できるに違いない!」
今思えばバカな発想だったなと思うのですが、ど素人な浪人生が読んでデザインとは何か?を理解できるわけはなかったのでした。
しかし、ですよ。
この本には、「はぐれもの」の話が書かれていたんですね。
この話を読んだ時、なんだか承認されたというか生きているのを許されたような気分になったんですよ。
ワタシはいわゆる団塊ジュニアの世代なので、
受験していい大学に行って大手企業に就職すれば一生安泰
という神話が親の世代に蔓延していたんですね。
とにかく、小学生の頃からみんな塾へ通って、学校ではみんな「勉強してない」って言いながら牽制しあって、同世代の人数が多いからとにかく競争競争で・・・
という10代を過ごしていたんですが、ワタシは考古いう生の頃にはもう精神的にはギブアップしていたんですよ。
楽しくないし、みんなと同じことをしないと不満を言われるし、本当にうんざりで。
でも、他の人生なんて知らないから、適応できない自分に罪悪感すら感じていたんですよね。
そんなワタシにとって、この本が運命の出会いだったと言っても納得いただけるでしょう。
運命とは不思議なもので、この本に触れて小論文に活路を見出し、合格したのは芸術学部写真学科でした。
著者はいいちこのポスターで有名な方なんですね。
だから、本中でもいいちこのポスターがたくさん紹介されています。
1989年出版ですけど、内容はデザインの世界から見た人生、生き方という読み方もできて、今読んでも心の琴線に触れる人は多いんじゃないでしょうか。
あなたのままで、いいんじゃない?
いいじゃないですか、コミュニケーションが苦手だって。
みんなに同調するのがなかなか難しくたって。
あなたにしかできない役目がきっとありますよ。
これからの道に迷っていたら、読みに来てね。
ちなみに、この本のはぐれものの話がストレイバード(はぐれ鳥)の由来です。