女性が語る体で書かれているにもかかわらず、見出しに踊る土佐弁「進歩ないぜよ」の衝撃から1年後、続編が出版されていたとは!
ANO- ANO Ⅱ「恋の教科書」
著者:下森真澄・宮村裕子
発行所:JICC出版局
初版発行:1981年6月15日
そうかあ。
この本は、『いのち短し恋せよ青少年!』がターゲットだったんだ。
とりあえず、この表紙デザインは好きですね!
1と2、並べてみましたが、どちらも捨てがたいですねえ。
さて、本書は女子大生2人が編集したコラム集と言ったところですが、内容は、まず青少年の定義ってどうなってるの?って思わず聞きたくなるほど、爽やかさがないんですよね~。
なんか、20代後半から30代のOLが職場の給湯室とか居酒屋でクダ巻いているときに話していそうな話が多い。
登場する女性は、やたらとタバコふかしてるし。
下森さんか宮村さんのどちらかがヘビースモーカーだったのかな?
時代背景〜昭和56年〜
時代背景を見てみると、昭和56年は校内暴力が史上最高だったらしいんですよ。
さらに、当時の流行語で文章を作ってみます。
「んちゃ!あたし、エグい粗大ゴミ!」
んちゃ!は、アラレちゃん。
えぐい、という言葉はこの年に流行。
粗大ゴミも流行語ですが、これは定年後に家でゴロゴロするだけの目障りな夫のことです。
ガンプラが大流行したのもこの年ですね。
あっ!
プロ野球、伝説の珍プレー
『宇野ヘディング事件』もこの年か。
まあそれはさておき、そんな中で若者のことはクリスタル族と呼んでいたようですね。
クリスタル族というのは、カタログ文化にかぶれた若者のことを揶揄した言葉のようで、ポパイを中心に雑誌で編集されたアメリカの流行などに影響を受けてファッションなどを選ぶ若者のことを言うようです。
たぶん、この流行から若者のライフスタイルや購買意欲をコントロールできることがわかってきて、その後のDCブランドブームや、クリスマスは赤プリの高層階からの夜景を眺めながらシャンパンで乾杯、みたいな鼻をつまみながらケンカキックをかましたい気分になる流行に繋がっていったんでしょうね。
本書の構成内容は?
本書は3部構成のようになっています。
ANO・ANOコンテンツ
男の育ち
嫉妬
女の喧嘩
ブス
男友達
ANO・ANOカタログ
Ⅰ 女のコ、見栄のT.P.O
Ⅱ 男の甘えのプラス・マイナス
Ⅲ 百年の恋がさめるとき
ANO・ANOⅡ 恋の教科書
第一章 恋の衝撃
第二章 恋の現実
第三章 恋の闘い
第四章 恋の終焉
これらに、下森さんと宮村さんのフリートークみたいな
ますみ&ユーコ・・・・・TALK
というコラムコーナーがあります。
この中で注目してしまうのは、やっぱり、
『ブス』
じゃないですか?
ブスの章の扉絵に書いてあることがなかなか奮っているんですよ。
あーっもう少し、ほんのちょっとでも美人に生まれたら
世の中千倍は楽しいに決まってる
生まれ落ちた宿命[ブス]とどう戦うか
平成も終わろうかという現在では、コンプライアンスなんていう化け物のせいで、ここまで明け透けにブスを表現できるのかな?
で、次のページを開いたら、
愛してくれなんて思いはしない
情けぐらいはほしかった演歌的「シコメの深情け」グスっ。
シコメって・・・
そんなワード、久しぶりに見たわ。
とにかく、人前で感じるコンプレックスや情けなくなる思いだけじゃなく、幸せをつかんだらつかんだで美人から嫉妬と嫌みをぶつけられるブスの悲哀を、読んでいる方が罪悪感を感じてしまうくらい、これでもかっ!と書かれています。
でも、これが許されるのは当時まだまだ多感な女子大生が中心になって編集していて、ほとんどの若い女性が心のどこかで感じていた傷がリアルに表現されているからなんじゃないかな。
蛇足ですが、この絵を見て!
ブスの章の挿絵なんですけど、
バナナマンの日村さんにそっくりじゃない?
ヒム子はすでに、昭和56年に登場していた!
男目線からひと言
男としては、女性のホンネを聞ける機会なんてなかなかないですから、この本の内容がどこまでリアルなのかは判断が難しいですが、避妊の意識レベルには多少の進歩がありそうだけど、男の情けなさについては全く快方に向かっていないですね。
いや、むしろこじらせて悪化しているのかも・・・
それって、ウェブがあるのが当たり前になった代わりに、プロの手で編集されたワンパッケージになっている情報が少なくなったのが一因で、便利になったはずが、まるでチャプターのないDVDビデオのように見たい場所を探すのが難しくなってしまった。
つまり、振り返ろうとしても時代ごとでどこまで進んだのかを確認できるメルクマールになるものがなくなってしまったから、男も女もいつまでたっても出会い下手のまま・・・・・、なのかもね。